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郷土史研究家 小泉俊夫 氏(故人)
昭和51年5月、『広報かしば』の編集担当者から、「ふるさとの歴史」を連載したいので執筆してほしいと依頼された。
町民の一人として『香芝町史』の編纂に関係したこともあって、原始時代から現在に至る町内の歴史を史料にもとづいて綴り、昭和55年3月まで47回にわたって寄稿した。
その後、読者の方から全文をまとめてほしいとの声があり、地域史に関心をもっておられる皆さんの期待に応えたいと思い、内容の不充分さを省みずに本書を刊行することにした。
とくに、サンデー文化教室一期会や中央公民館の歴史講座で、学習を共にした皆さん方にご一読いただけば有難いと思う。
広報の紙面では、内容の構成と文字数に制約があり、史料も町内のものに限ったので、自分としても充分に意をつくし得なかったところがあった。
本書は、香芝町に接する近隣の地域を含め、日本史の歩みのなかに地域史を位置づけた歴史の流れを要約して述べ、ふるさとに遺されている史料などをあげて考察することにした。
掲載の写真は、香芝町秘書課の御好意によって、広報紙に用いた写真の提供を受けた。
読者と共にそれぞれの史跡や史料をとおして、香芝の歴史をひもとく一助となることを願っている。
最後に、本書の出版にあたり、恩師池田源太先生に稿閲をお願いしたところ、ご快諾いただき、印刷所までお世話して下さった先生に心よりお礼申し上げ、学生時代より折にふれ学究の徒となることを諭された先生の御教えを心して、さらに一層の努力を積みたいと思う。
香芝町の歴(通)史を、みなさんに知ってほしいと出版した初版本がなくなり、香芝市の誕生で新しく躍進を続ける地域史の流れを、更に多くの市民に読んで頂きたいとの一念から、初版を改訂して版を重ねることにした。
この間に、二上山博物館友の会「ふたかみ史遊会」の会報に寄稿してきた「歴史探索への提言」でとりあげた内容も付加した改訂版である。
いろいろな歴史の舞台となった香芝の自然は日々新しい姿に生まれ変ろうとしているが、これも一つの時代の流れであり、地域社会の発展への道程でもある。
その歴史のなかで、二上山麓にひらかれた香芝のさとに生きる私たちは、この地域の歴史の証人である史跡や文化財を、市民共有の財産として後世に伝えてほしい。
その思想のために、少しでも役立てばと思い再版することを決意した。
小泉先生の生前の御意思により、より広く読んでいただけるのならというお気持ちを尊重し、初版、第2版に続き全文を公開させていただきました。